第二種金融商品取引業の買収の留意点
金融商品取引業者の中でも、事業会社にとって比較的心理的なハードルが低い金融商品である、ファンド及び信託受益権を主に取扱う第二種金融商品取引業へは、常に一定の参入ニーズがあります。
第二種金融商品取引業者は、第一種金融商品取引業者や投資運用業と比べてその規模や業務実態は千差万別ですが、総じて第一種金融商品取引業者や投資運用業者よりも、はるかに小規模な会社が多く、また休眠状態の事業者が多いものの、稼働している第二種金融商品取引業者に限っていれば、投資助言・代理業者よりは売上面や人数面でやや規模が大きい傾向にあるといえます。
ファンド業務と信託受益権業務の違い
第二種金融商品取引業の新規登録は非常に難しくなっており、とくに大手数社で問題が相次いだソーシャルレンディング業態の貸付型ファンドを行う事業者の登録は、至難の業になっています。M&Aで第二種金融商品取引業者を買収する際には、とりわけファンド業務の第二種金融商品取引業については、取り扱うことのできるファンドと役職員の構成を引き継ぐことができるかが重要です。
これに対して、不動産信託受益権等の販売を行う第二種金融商品取引業者では、買収後の引継ぎが比較的スムーズであり不動産信託受益権関連業務に関して言えば、役職員が留任するか、又は適切な後任者を用意できる限り、買収後比較的早期に業務開始できます。
もっとも、信託受益権関連業務を行う第二種金融商品取引業者を買収して、その後ファンド業務を始めようとする計画でM&Aを行った場合には、ファンド業務を開始するのは容易なことはでありません。もっとも、ファンド業務→ファンド業務の変更であっても、組織構成やファンド内容が大きく変わるのであれば、いずれにせよ新規に近いような審査が行われる関係上、信託受益権だから特に不利になるというわけでもありません。
人的構成
他の業態と同様に第二種金融商品取引業も登録要件に「人的構成」がありますので、銀行や証券会社での職務経験がある常勤の役職員が社内にいないと、買収したはいいものの、登録を維持できません。また、役職員が辞任する前提であれば、後任となる経験者を的確に確保する必要があります。
取り扱い可能なファンド
第二種金融商品取引業者の業務方法書には、ファンドの出資対象事業の内容を記載するようになっていますので、この業務方法書の変更届出をしない限り、新たなファンドを販売することができません。
逆に言えば、やりたいファンドと現在販売しているファンドが同じ内容であれば、「業務方法書」の変更届出が不要になるため、M&A後に早期に業務を開始できることになります。
業務方法書の変更届出は、届出の名前が付いていますが、事実上の受理審査があります。計画しているファンドの内容の実在性、実現性、収支見通し、モニタリング体制等、ありとあらゆることについて説明が求められますし、これに対して十分な内容の回答が出来なければ、変更手続きが止まってしまいます。よって、新しいファンドの販売を計画するにあたっては、事前に十分に検討して隙のない計画を立案する必要があります。