投資助言・代理業者の買収の留意点

金融商品取引業者の中では、投資助言・代理業は業者数が多いため、比較的活発にM&Aの取引が行われています。第一種金融商品取引業者や第二種金融商品取引業者と比べると役職員数が少ない小所帯の会社も多く、買収金額もこれらと比べて低めになる傾向があります。

投資助言・代理業者の買収では、現在の業務内容と役職員の構成を引き継ぐことができるかが重要です。投資助言・代理業にも登録要件に「人的構成」がありますので、銀行や証券会社での職務経験がある常勤の役職員が社内にいないと、登録を維持できません。

せっかくM&Aで買収しても、こうした経験者を確保できないと、肝心の業務を開始できません。

当局は、人的構成が不十分な状況で、コロコロと金融商品取引業者の株主が変わることを歓迎しておらず、M&Aで買収するのであれば、役職員を留任させて継続して業務に取り組むか、または、しっかりとした知識経験を有する新たな役職員を用意して取り組む必要があります。

業務方法書の変更

投資助言・代理業者では、料金体系や具体的なサービス内容まで、詳しく「業務方法書」に記載して財務局に届出することになっています。この届出には事実上の受理審査がありますので、投資助言・代理業者のサービス内容は基本的に財務局の確認を受けなければなりません。

よって、M&Aでの買収により新たなサービスを開始したり、または既存のサービスの料金体系の変更をしたい場合には、当局に届出をして確認を受ける必要があります。

M&Aにより社内体制が変わった場合には、往々にして、新たな役職員による社内の人的構成の審査と同時並行して、業務方法書の改定案に基づく新サービスの内容の審査が行われています。

投資助言・代理業者で多いM&A事例

□事業承継

平成20年代半ばまで、投資助言・代理業の登録には人的構成の要件がなかったこともあり、比較的古い時期に登録された投資助言・代理業者は、代表者個人の属人性が高い会社が多くなっています。そのため、代表者の引退と共に事業の廃止を検討される会社も多くなっています。

こうしたケースでは、事業承継として経営権を新たな株主に譲るとともに、現在の経営者様も、非常勤の役員や顧問として、今までの知識経験を活かした形で、引き続き会社経営をサポートされる方も多くなっています。

一般的な事業会社と異なり、金融商品取引業では、登録要件や法令等の知識経験の関係から、長年の経験を持つシニア世代へのニーズは依然として強いものがあります。

また、売却側にとっても、企業経営からの引退後も、経験を活かして顧問等として定期的な収入を確保できることは大きなメリットといえます。

事業承継型のM&Aは、世代交代に伴って、そのままでは失われるはずの事業や証券業界の知識経験が、次世代に受け継がれることに繋がります。当社としても、積極的にこれを支援しております。

□廃業

IT事業、ファンド運用事業など、投資助言・代理業以外の事業を本業とする事業者の場合、投資助言・代理業に登録はしたものの、経営戦略の見直しや事業再構築等の理由で、投資助言・代理業を廃止するケースが多くなっています。

近年、こうしたケースで、株式を保有する親会社等から投資助言・代理業者の譲渡の依頼を受けるケースが多くなっています。

こうしたケースで特徴的なのは、投資助言・代理業登録のために採用した役職員がいる場合には、会社の廃業に伴い、そのままでは解任、解雇が想定されるため、人員の引継ぎが比較的容易な点、撤退する株主側に譲渡条件等に関するこだわりが少ないケースが多いことです。